小説でLINE・チャットの会話を書く方法|5つの表記例
小説でLINEやメッセージのやり取りをどう書くか、5つの表記を例文つきで解説。紙の本、電子書籍、Web小説、オーディオブックでの違いや、リアルに見せるコツも紹介します。
小説の中でLINEやメッセージのやり取りをどう書くか、決まったルールはありません。表記の手引きも書き手に任せていて、出版されている小説を見ても書き方はさまざまです。それでも、うまくいっている書き方には共通点が3つあります。
- メッセージが、声に出したセリフと見分けられる。 読者が会話と取り違えません。
- どのメッセージを誰が送ったのか、いつもわかる。
- 最初のメッセージから最後まで、同じ表記で通す。
この記事では、よく使われる5つの表記を例文つきで紹介します。そのあとで、紙の本、電子書籍、小説家になろうやカクヨムのようなWeb小説、オーディオブックでそれぞれ何が変わるのか、そしてメッセージそのものをリアルに見せるコツを説明します。
小説でメッセージを書く5つの表記
1. 地の文の中で、記号や書体を変える
登場人物がちらっと目にする1通、または短い2通に向いています。
カウンターの上でスマホが震えた。『今夜、来るよね?』 彼女は画面を伏せた。
英語の小説では斜体で示すことが多いのですが、日本語の組版では斜体はほとんど使いません。代わりに『』や【】で囲む、ゴシック体など別の書体にする、といった方法が一般的です。ここで避けたいのは「」です。読者は「」をセリフの記号として読むので、メッセージを「」に入れると、声に出して言ったように見えてしまいます。作中ですでに『』を心の声や電話の声に使っているなら、メッセージには別の記号を選ぶか、2の形式にして、混ざらないようにしましょう。
2. 行を分けて、送り主の名前をつける
3通以上の、ちゃんとしたやり取りに向いています。
自分: 考えがある
悠斗: もういい加減あきらめなって。正直ヤバいよ
自分: ダメとは言ってないよね
1通ごとに行を変え、頭に送り主の名前を置きます。いちばんわかりやすい形式で、どの電子書籍リーダーでも、どの書体でも、オーディオブックの朗読でも崩れません。「自分」の代わりに語り手の名前を書く人もいて、それでも問題ありません。
3. 名前を太字にして、地の文と同じ字下げで並べる
2のバリエーションで、ライト文芸や青春小説でよく見かける書き方です。名前を太字にし、各メッセージを普通の段落と同じように字下げするので、台本のようには見えず、ページの流れに自然になじみます。編集者や出版社に表記ルールがあればそれに従い、なければ2か3を選んで、最後まで統一しましょう。
4. スマホ画面のように左右に振り分ける
送ったメッセージを右、受け取ったメッセージを左に置く、メッセージアプリそのままの配置です。いちばん本物のスマホに近く見え、2人の会話なら名前もいりません。
問題はレイアウトです。リフロー型の電子書籍では左右の字下げが崩れやすく、会話が1列にまとまって、どちらの発言なのかわからなくなります。縦書きの本ではそもそも左右に振り分けにくい点にも注意が必要です。この形式は、最終的なレイアウトを自分で決められるとき(印刷用のPDF、固定レイアウトの電子書籍、Webページ)だけに使い、いつでも名前つきの形式に戻せるようにしておきましょう。
5. 会話のスクリーンショットを貼る
Web小説、SNSで読まれる小説、InstagramやTikTokのストーリー、Webマンガ、固定レイアウトの本に向いています。登場人物が見ている画面そのままのチャット画像を入れます。
スクリーンショットなら、文章では説明しなければならない細部が一目で伝わります。時刻、既読の表示、返信までの間、青い吹き出しか緑の吹き出しか。自分のスマホを使わなくても作れます。Fake Text Makerに会話を入力し、相手の名前、時刻、既読表示を設定すれば、iPhone風のスクリーンショットをPNGでダウンロードできます。無料で、登録も不要です。
気をつけたいことが3つあります。
- 画像と同じ言葉を文字でも残す。 代替テキストや、画像の前後の文章に書いておきましょう。スクリーンリーダーやオーディオブックは画像を読めませんし、検索エンジンも文字のほうが読み取りやすいからです。
- スクリーンショットの見た目をそろえる。 同じスマホの見た目、同じライトモードかダークモード、同じ相手の名前で統一します。
- 紙の本ではカラーは高くつく。 文庫や単行本なら、グレースケールの画像か2の形式のほうが無難です。
新人賞や持ち込みの原稿ではどう書くか
新人賞に応募する原稿や、編集者に送る原稿なら、表記はシンプルにしておきましょう。記号で囲む形式か名前つきの形式を選んで統一し、スクリーンショットやスマホ風のレイアウトは入れないのが基本です。レイアウトは、本になることが決まってからデザイナーが考える仕事です。見た目の演出が物語にとって重要なら、編集者への短いメモでその意図を伝えましょう。
紙の本、電子書籍、Web小説、オーディオブックでの違い
どの形式が合うかは、物語がどこで読まれるかで決まります。
- 紙の本: ページを自分でコントロールできるので、1〜4はどれも使えます。ただし縦書きでは4は工夫が必要で、フルカラーの画像は印刷代が上がります。
- リフロー型の電子書籍(Kindle、EPUB): 1〜3なら安全です。左右に振り分けたレイアウトは崩れることがあり、画像の中の小さな文字はスマホでは読みにくくなります。
- Web小説、SNS小説、二次創作: 小説家になろうやカクヨムのような投稿サイトは文字が中心なので、2か3がなじみます。画像を入れられる場所やSNSでは、スクリーンショットはよく使われていて、読者も慣れています。チャットの画面だけで物語が進むチャットノベルも珍しくありません。
- オーディオブック: 朗読する人が送り主を言わなければならないので、名前つきの形式(2か3)がいちばん読みやすくなります。
メッセージそのものをリアルに見せるコツ
表記は半分にすぎません。もう半分は、「」を外しただけのセリフではなく、本当にスマホで打ったように見える文面を書くことです。
- 短くする。 人は長い1通より、短いメッセージを3通続けて送ります。
- 句読点をゆるめる。 文末に「。」をつけない、改行で区切る、「笑」や「w」で終わる。実際のやり取りはそういうものです。キャラクターごとにクセをつけましょう。いつもきっちり「。」で終える人もいれば、ひらがなばかりの人もいます。
- 絵文字や略語はほどほどに。 少しなら声色が出ますが、多すぎると数年で古びた本に見えてしまいます。
- 時間に語らせる。 時刻の表示、深夜2時14分の既読スルー、表示されては消える入力中の「…」は、どんなセリフよりも緊張感を生むことがあります。
- 反応を見せる。 メッセージの間に動作をはさみましょう。返信を待つ間に何をしているか、誰にスマホを見せるか、打っては消しているか。
『ごめん』と打って、消した。もう一度打った。彼の側で「…」が出て、消えて、それきりだった。
よくある失敗
- メッセージを「」に入れて、セリフのように読めてしまう。
- 途中で表記が変わる。
- 誰も送らないような、段落ほどの長さのメッセージ。
- 名前のないグループチャットで、誰が話しているのか読者が見失う。
- スクリーンショットだけで文字の情報がなく、スクリーンリーダーやオーディオブックで内容が消える。
よくある質問
小説のLINEやメッセージは『』で書けばいいですか?
地の文の中の短いメッセージなら、『』や【】で囲むか、書体を変えるのがよくある方法です。長いやり取りなら、1通ずつ行を分けて送り主の名前をつけるほうがわかりやすくなります。どちらでも構いませんが、最初から最後まで同じ表記で通しましょう。
メッセージに「」は使いますか?
基本的には使いません。「」は声に出したセリフの記号なので、読者は登場人物がメッセージを口に出して言ったと受け取るかもしれません。『』や【】、別の書体、名前つきの形式なら、セリフと区別できます。
小説でグループチャットはどう書けばいいですか?
すべてのメッセージに送り主の名前をつけ、やり取りは短めにしましょう。3人以上なら、2の形式(各行に名前とコロン)が、どの版でも読みやすさを保てる唯一の書き方です。
本にメッセージのスクリーンショットを載せてもいいですか?
はい。特にWeb小説や固定レイアウトの電子書籍ではよく使われます。実在の人のチャットのスクリーンショットではなく自分で作った画像を使い、同じ言葉を文字でも残し、紙の本でカラーを使う前には印刷代を確認しましょう。
既読スルーはどう書けばいいですか?
文章なら、そのまま書きます。「23時52分に既読。それだけだった。」スクリーンショットなら、最後のメッセージの下にある既読表示が、それを伝えてくれます。